御曹司は不遇な彼女に本物の愛を注ぐ
「独身でも彼女さんくらい、いるんじゃないですか?私は出会ったばかりですし、神宮寺さんに助けてもらったのに、これ以上迷惑かけるのは申し訳ないです」


どうせアパートに帰っても待っているのは地獄……。公孝(きみたか)には別れるみたいなメッセージを送っちゃったし。


公孝のことだから怒ってるだろうな。次に公孝に会えば殴られるのは目に見えている。


家に帰りたくない。会社にも行きたくない。でも、そんな我儘は許されない。神宮寺さんに助けられた命、ここで無下にするのは神宮寺さんにも申し訳ない。


「彼女はいない。それに俺、童貞だし。三十すぎて童貞だと魔法使いになれるらしいな。って、このネタはお前みたいな若い奴には通じないか」

「わかりますよ。私、神宮寺さんと三歳しか変わりませんから」


神宮寺さん、目元がキツいから強面イケメンって感じで自虐ネタなんて言わなそうなのに……。

言うことが面白い。見た目とのギャップで思わず笑ってしまった。


「やっと笑ってくれた。お前、笑うと可愛いじゃん」

「っ……!」


「だから俺のとこに来いよ」

「は、はい」


「いいのか?」

「神宮寺さんこそ私なんかでいいんですか?」


まるで結婚前の言葉みたいだ。そんなことを考えてしまうのは私だけだよね。


私だっていい年齢だ。女性なら大好きな人と結婚してウェディングドレスを着てみたいというのは何歳になっても憧れなはず。


私の場合、背中にも大きな傷があるから、そんな儚い夢も夢のまま終わりそうだけど。
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