御曹司は不遇な彼女に本物の愛を注ぐ
「これ以上、お前が不幸になる姿を俺は見ていられない。このまま家に帰ればお前は彼氏に何をされるかわからない。お前はどうしたい?」

「神宮寺さんが迷惑じゃなければ……」


この言い方は駄目だ。何がダメなんだと言語化するのは難しいけれど、私の勘がそう言ってる。


神宮寺さんは私と一緒に住んでいいと言っている。あとは私自身の問題だ。神宮寺さんの言う通り、このまま家に帰っても、私の置かれている状況は変わらない。


公孝が変わる機会はいくらでもあった。けれど公孝は変わってくれなかった。なら、私が変わるしかないんだ。


私は私の手で幸せな未来を掴むんだ。私にだって幸せになる権利くらいあるはずだから……。


「不束者ですが、これからお世話になります」

「なんだよ、それ」


私の発言がおかしかったのか神宮寺さんは笑った。神宮寺さんは笑顔さえもカッコいい。口を大きく開かず笑うところも上品だ。


「神宮寺の名前を聞いて驚くかと思ったら、変わらずその態度だもんな。それでこそ俺が助けた女だ」

「え?え?」


神宮寺さんとエレベーターを使って、ビルを出ようとしたところだった。神宮寺さんの言ってることがわからず、私は思わず口をポカンと開けてしまう。
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