気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
プロローグ
――きっと、夢を見ているに違いない。
ごく普通の一般人でしかない私が、世間から大注目の大型リゾート施設『プレザントリゾート』のオープニングセレモニーに参加しただけでも驚きだというのに。
「どうかしたのか?」
そう言って、階段を一段下がった場所から私を見上げ、穏やかな笑みとともに手を差し出しているのは、このリゾート施設の経営者である水無月(みなづき)志信(しのぶ)社長だ。
艶やかな黒髪と、水を含んだようにしっとりした色気を漂わせた黒い瞳。どこか憂いや影を感じさせる表情だけれど、口もとに浮かんだ甘い笑みのおかげで暗さを感じさせない。
「野瀬(のぜ)さん?」
「あ……すみません」
目の前の状況に思考停止していた私へと、彼の優しい声が降る。
この瞬間まで私は、『優陽(ゆうひ)』という下の名前は気に入っていても、野瀬という響きの名前をかわいげがないと思っていた。
ごく普通の一般人でしかない私が、世間から大注目の大型リゾート施設『プレザントリゾート』のオープニングセレモニーに参加しただけでも驚きだというのに。
「どうかしたのか?」
そう言って、階段を一段下がった場所から私を見上げ、穏やかな笑みとともに手を差し出しているのは、このリゾート施設の経営者である水無月(みなづき)志信(しのぶ)社長だ。
艶やかな黒髪と、水を含んだようにしっとりした色気を漂わせた黒い瞳。どこか憂いや影を感じさせる表情だけれど、口もとに浮かんだ甘い笑みのおかげで暗さを感じさせない。
「野瀬(のぜ)さん?」
「あ……すみません」
目の前の状況に思考停止していた私へと、彼の優しい声が降る。
この瞬間まで私は、『優陽(ゆうひ)』という下の名前は気に入っていても、野瀬という響きの名前をかわいげがないと思っていた。
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