気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 次に多そうなのは、やけに立ち居振る舞いに余裕を感じる人々だ。こういった贅を尽くした華やかな場所に慣れているように感じる。

「あ、見て。あそこにいるのって俳優の……えっと、名前ド忘れしちゃった。ほら、今度映画に出る人」

 円香に肩を叩かれて視線の先を見ると、たしかに知った顔の男性がいる。

 だけど残念ながら、私はあんまり俳優に詳しくない。

「それじゃ全然ヒントないよ」

「うーん、ここまで出かかってるんだけど……」

 もどかしそうに首をひねった円香が、ふとホールの奥に目を向ける。

「あっちに向かったほうがいいかも」

 スタッフの誘導に従って廊下を歩く際も、まっさらな絨毯や壁紙に目を奪われる。

 私の貧困な語彙力では『すごい』『豪華』『きれい』くらいしか感想が出てこないけれど、漏れ聞こえてきた声いわく有名なデザイナーのものらしい。

< 10 / 276 >

この作品をシェア

pagetop