気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 やがて案内されたのは、エントランスとは比べものにならない広さの部屋だった。

「体育館みたい……」

 既視感のある広さに思わず呟くと、隣でふっと噴き出すのが見えた。

「ちょっと、笑わせないで」

「ご、ごめん。つい」

「優陽のせいでもう体育館にしか見えなくなっちゃう」

「バスケットゴールがあったら完璧だったね」

「笑わせないでってば!」

 きっとこんなことで笑っているのは私たちだけだ。

 そう思っているうちに、誘導がスムーズに進み始めたのか、続々と招待客が広間に集まってくる。

「この後の施設見学も楽しみだね」

「うん」

 そんな話をしながら、普段なら手の届かない素敵な世界の空気に浸った。



 セレモニーが始まるまで、三十分も待たなかった。

 ハキハキと通りのいい声で喋る司会による挨拶を経て、このリゾート施設の関係者紹介に移る。

< 11 / 276 >

この作品をシェア

pagetop