気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 ただ、彼には相性の悪かった女性たちの評価を、自分のすべてだと思い込んでほしくない。

「……すごくうれしかった。人にご飯を食べてもらうって、こんなにうれしいんだって思えたの」

「今まで、友人やご両親にも作っていたのに?」

「志信さんだからだよ」

 結婚当初に比べて、だいぶ見慣れた顔を見つめて言う。

「……君は、俺が嫌じゃないのか? 面倒事に巻き込んで結婚なんて要求したのに」

「ほかの人だったら、さすがに結婚を承諾しようとは思わなかったよ」

 出会った当初から、志信さんは私にとっていい人だった。程よい距離感と優しさが心地よくて、もっと話したいと思うような人だったのだ。

「きっと私みたいな人はたくさんいると思う。だから志信さんはドライじゃなくて素敵な人だよ」

「……そう、か」

「私が保証するから。一応、妻だし……」

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