気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 あなたは魅力な人だと伝えたくて、つい熱くなってしまった。

「ええと、なんの話をしていたんだっけ。宗吾くんのことは説明したし……ああ、人に触られるのが苦手って話だっけ……?」

 冷静になるとますます恥ずかしさが込み上げる。

 さっきまでよりも触れ合う手を意識してしまい、さすがに解こうとした。

「優陽」

 だけどまた、志信さんに握り締められて失敗する。

「離さないでくれ。……いや、離れないでくれ」

「あ……う、うん」

 改まって言われるとは思わず、じわりと頬が熱くなった。

 冷えていると言われた指先には、とっくに彼の手が移っている。この手が大きくて指が長いことなんて、知らないほうが幸せだったに違いない。

 だって、さっきからずっと心臓がうるさくて胸が苦しい。

 どんなに優しくされて甘やかされても、彼を好きになってはいけないのに――。
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