気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
契約夫婦


「いい加減、その顔をやめろ」

 株式会社ウェヌスクラースのオフィス、主に重役が使う会議室にて不快感を隠そうともしない声が響く。

「ん?」

「ん、じゃない」

 声をかけられてそちらを向くと、長年の親友であり、ビジネスパートナーでもある筑波藍斗が眉間に皺を寄せていた。

「最近おかしいぞ。プレザントリゾートがオープンして気が抜けたのか?」

「俺がそういう人間だと思うか?」

「思わない。だから指摘しているんだ」

 ここには俺と藍斗だけ。だから社長同士のやり取りではなく、友人としての反応になる。

「結婚のせいでそうなったんじゃないだろうな」

「違うとは言えないな」

 藍斗には優陽との契約結婚について既に説明していた。

 俺の軽率な行動のせいで君の夢に傷をつけるわけにはいかなかった、とまでは言わなかったが。

「馬鹿馬鹿しい」

 そう言って藍斗は行儀悪く足を組んだ。

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