気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「こんなことならまともな恋愛をしてくればよかったな。この気持ちを本当に愛と呼んでいいのか、俺にはわからないんだ」

 藍斗の探るような視線を感じて苦笑する。

「俺は君を見ているからな。愛とはそういうものなんだろう?」

 重くて苦しいもの。それなのにどんなに傷ついても焦がれ、渇望してしまうもの。

 少なくとも俺の中で、愛とはそういう感情だ。

「……勝手に人を理解した気になるな。俺は……違う」

 だったらなぜ『妻』について語る時、ときどき寂しそうな目をするのか――。

 言うとまた機嫌を損ねるだろうから、黙っておいた。

「だいたい、なんだ。散々のろけておきながら、よくもわからないなんて言えるな」

「はは、まあそれもそうだな」

 俺が優陽に抱く感情は淡く、温かく、幸せでくすぐったいものだ。

 藍斗を見て学んだものとはまったく違う。

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