気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 だから、この温かな想いを愛と呼んで優陽に伝えていいかがわからない。

「志信、いつかお前も思い知るんだ。好きになればなるほど、つらくなる」

「それは自分の話か?」

 実感がこもった助言を受けて言うと、また舌打ちが返ってきた。

「お前のそういうところが嫌いだ」

「それはありがとう。今後ともよろしくな」

 俺はきっと優陽が好きだ。ただ、確信を持てない。

 夕食の席で俺の反応をそわそわしながら待つ姿が好きだ。

 一緒にドラマや映画を見たり、感想を言ったりするひと時も愛おしい。

 最低な親戚から守ってやりたいし、幸せにしたい。いつも笑顔でいてほしい。

 俺が彼女に抱く想いはどれも甘くてもどかしいから、知っているものとの違いに困惑する。

『ほかの人だったら、さすがに結婚を承諾しようとは思わなかったよ』

 そう言った優陽を思い出して、また胸の内が温かくなる。

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