気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 ――彼女を想って苦しくなるのが愛だとしたら、今抱いているこの感情をなんと呼べばいいのだろう?



 今日も仕事は定時で終わらせた。

 秘書の魅上は最初こそ驚いていたものの、これまで俺が働き詰めだったのをひそかに気にしていたようで、よかったと言ってくれている。

「まっすぐお帰りでいいですか?」

 運転席の魅上に質問されてうなずく。

「頼むよ。いつも助かる」

「専属秘書ですから」

 藍斗以外に気心知れた相手を挙げろと言われたら、この魅上の名前を出すだろう。

「あれから奥様とはいかがですか?」

 車を発進させた魅上が、俺のほうを見ないまま尋ねた。

「特にこれといった問題はないな。順調だよ。もし夫婦でどこかに招待されても、うまくやれるだろう」

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