気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「あんまりうまくやりすぎると、契約を終えた時に逆に騒がれるのでは? あんなに仲睦まじかったのになぜ――なんて週刊誌に取り上げられるのはごめんですよ」

「それは考えたこともなかったな」

 たしかに、長年匂わせもしなかった相手と突然結婚し、幸せそうな姿を見せていたのに、たった一年で離婚となれば世間が騒ぐかもしれない。

 離婚に説得力が出るよう、もう少し優陽と距離を置くべきかと思ったが、その考えを否定する。

「その時はその時だ。一年後までいちいち俺について騒ぐ人もいないだろう」

「社長は楽観的すぎます。ご自分が有名人だと自覚なさったほうがいいですよ」

「芸能人でもないのに、大げさだな」

 今回はプレザントリゾートのオープンと重なり、週刊誌にとって格好のタイミングだったから先手を打って契約結婚を申し出たのだ。

 これが違うタイミングだったら、きっと話は変わっていた。

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