気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「芸能人のようなものでは? 社長があの水無月家のひとり息子だということも有名ですし」

「少なくとも優陽は知らないんじゃないか。それらしい反応を見たことがない」

「……テレビなどご覧にならないんですかね」

「そういえばあまり見ないと言っていたな」

「なるほど。それなら、まあ」

 魅上と話しながら、窓の外を流し見る。

 車が赤信号で止まった時、視界に入ってきたものを見て顔ごとそちらに向けた。

「魅上」

「はい」

「そこのビルの前に停めてくれ」

「え? 承知しました。なにかあったんですか?」

「ああ」

 忠実な秘書はきちんと駐車場に車を止めてくれた。

 ドアを開けた俺についてこようとしたのを見て、やんわりと制する。

「すぐ戻ってくる。適当に時間を潰していてくれ」

「適当にと言われましても。どのくらいでしょう?」

「三十分はかからない……と思う」

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