気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「かしこまりました。珍しいですね、寄り道なさるなんて」

「独り身だったらしなかっただろうな」

 そう言って、先ほど車で通った通りに向けて足を速める。

 高いビルが立ち並んだその通りは、ハイブランドがいくつも出店していることもあり、年中きらびやかだ。

 人や車の出入りも多く、海外からの観光客も少なくない。

 平日の夜にもかかわらず混雑しているのはそういう理由だろう。

 あまり時間をかけては魅上に申し訳ないし、なにより家で夕飯の支度をしている優陽を待たせることになる。

「いらっしゃいませ」

 三分も歩かずに到着した店には、店員が数人いるだけで客の姿が見当たらない。

 それもそのはず、ここはプロポーズの指輪をもらうならここがいいと、十年連続でランキングのトップを独占する有名なアクセサリーブランドだ。

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