気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 銀のチェーンも存在感は控えめで、人によっては地味だと感じるかもしれない。

 でも俺は、慎ましやかながらも目を離せない輝きを持つところに優陽を重ねてしまった。

「うん。……きっと似合う」

 ホテルを案内した時の驚いた反応や、慣れるためにと手を握ったり、頬に触れたりした時のはにかんだ表情を思い出して呟く。

 今まで形式的に女性にプレゼントを渡したことはあったが、その時に抱いていた義務感が不思議とない。

 純粋に優陽の反応が見たくて――これをつけて一層輝く彼女を見たくて、スタッフからの説明もそこそこに購入を決めた。



「ただいま」

 ささやかな用事を済ませて帰宅すると、優陽がわざわざ玄関まで出迎えに来る。

「お帰りなさい。今日はビーフシチューだよ」

 今日も俺が手料理に喜ぶ姿を楽しみにしているのだろう。期待した眼差しを向けられて、また彼女が愛おしくなる。

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