気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 相手の反応を見たがるのは俺だけじゃないようだと思った。

「ここまでいい香りがする。またおかわりが止まらなくなりそうだ」

「お鍋いっぱいに作ったからたくさん食べてね」

 彼女はうれしそうに言うと、食卓の準備をするためか、すぐにキッチンへ向かってしまった。

「……胃袋を掴まれるとは、こういうことを言うんだろうな」

 苦笑して靴を脱ぎ、部屋にカバンを置いてすぐに部屋着に着替える。

 先ほど寄り道で手に入れたものを背に隠し持ってリビングに向かうと、ダイニングテーブルには既においしそうなビーフシチューと焼きたてのパンの用意があった。

 クルトンが乗ったサラダは鮮やかなパプリカで彩られ、空腹をますます刺激する。

 今日の俺のための一品は、角切りにされた刺身とキュウリのマリネだ。

 手間になるからいいと言ったのに、優陽は毎日もう一品用意してくれる。

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