気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 本人いわく作るのが好きだからかまわないとのことだったが、よく食べる俺を気遣ってくれているのはすぐにわかった。

 誰だってそんな気配りをされたら好意を抱かずにはいられないだろう。俺もそうだった。

「うまそうだ。パンも自分で焼いたのか?」

「うん。ちょっとやわらかすぎたかも……」

「君が作ったものなら、どんなものでもうまいよ」

 隠し持っていた箱をテーブルの端に置き、席について優陽と向かい合う。

 いただきます、と両手を合わせて一緒に食事を取るのも何度目か。

 優陽はいつも俺の反応を見てから自分の料理に手をつける。

 今日もそうだと思っていたが、予想に反して彼女の視線は俺に向いていなかった。

「その箱はなに?」

 夕食後に渡そうと思っていたそれについて聞かれ、改めて後で持ってきたほうがよかったかと反省する。

 早く渡した時の顔を見たくて、つい気が急(せ)いてしまった。
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