気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「ああ、後で渡すよ」
「渡す? 私に?」
優陽はしばらく不思議そうにしていたが、それなら後にしようとすぐに割り切ったようだった。
いつも通りほのぼのした食卓を囲み、一日の出来事を話す。
温かで優しい時間だった。
実家では味わったことのないひと時を、いつからこんなに楽しみに思うようになったのか。
これまでは眠るために帰ってくる場所だった自宅が、今は彼女と過ごすための場所に変わっている。
手料理が楽しみなのはもちろんある。しかしそれ以上に、優陽がいるから早く帰ってきたいと思うようになった。
「……ごちそうさまでした」
しっかり三回おかわりをいただいてから手を合わせる。
「おそまつさまでした」
食事の後、心なしか得意げな顔をする優陽がかわいい。
今日もたくさん食べてもらえたぞ、という満足感がにじみ出ている。