気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「もしかして知り合いって……」

 そこまで言いかけてから言葉を切って、自分の考えに苦笑する。

 幸い、円香の耳には届いていなかったようだ。

 よく考えてみればすぐにわかることだ。広間には三百人近い人間がいるし、私たちがいる場所は檀上からも離れている。

 さらに私たちの前には背の高い男性がいて、百六十センチの円香でさえ埋もれていた。彼女より三センチ低い私も、もちろん人混みの中だ。

 そんな状況で筑波社長が私たちに目を留めたと思うなんて、どうかしている――。



 開会式を終えた後は自由時間だった。

 好きなように施設内を楽しんでもいいとのことで、一斉に招待客が各地へと散る。

 私たちも見学をする予定だったけれど、先ほどから円香は心ここにあらずといった調子だった。

「そんなに知り合いに似てるの?」

 なにやら考え事をする円香に尋ねてみる。

「まあ、うん」

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