気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼女との写真を撮られたと知って調べた時、その辺りの情報は頭に入れていた。

「記念日……でもないよね」

「特別な日じゃないといけないのか?」

 雲行きの怪しさに不安を覚えながら聞くと、優陽は眉を下げたまま首を横に振った。

「うれしくないわけじゃないの、ありがとう」

 わざわざひと言付け加えるところに、彼女の本心が見え隠れしている。

 うれしくないわけではないが、素直に喜んでいるわけでもない。

 なぜ?と思った。女性はプレゼントを喜ぶものだと思っていたからだ。

「日頃の礼のつもりだ……と言っても、受け取りづらいか?」

 彼女が明らかに戸惑いを覚えているのを感じて言う。

「お礼ならもう、両親への援助をしてもらってるよ」

「それ以上に君になにか贈りたかったんだ」

 優陽は箱の中のネックレスから俺に視線を移し、ややぎこちない笑みをつくった。

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