気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「ありがとう。でも私にはなにもしなくて大丈夫だよ。今のままで充分だから」

 こんな顔を見るはずではなかったのに、どこで間違えたのだろう。

「後でさっそく付けてみるね。とりあえずこれ、片付けてきちゃう」

「……ああ、うん」

 ネックレスが入った箱を丁寧にテーブルの端に置いた優陽は、汚れた食器を手に立ち上がった。

 俺も自分の食器を流し台へ運びながら、なぜ彼女が困った顔をしていたのかをずっと考えていた。



◇ ◇ ◇



 志信さんはやっぱり、住む世界の違う人だ。

 食洗器に食器を入れながら、改めてそう認識する。

 贈りたいと思ったから、似合うと思ったから、という理由でとんでもないものを渡されてしまった。

 あれは超がつくほど人気のハイブランドのネックレスだ。

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