気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「だったらまた一緒に買いに行こう。服も贈りたい。必要なら靴だって」

 私以上に志信さんのほうが必死に見えるのは、きっと気のせいだ。

 彼は出会った時にも、ドレスと靴を贈ると言ってくれた。

 だけど今、私にプレゼントしようとする理由と、その時の理由は絶対に違う。

 あの日のように甘えられないのは、その理由がなにかわからないからだ。

「自分で買うよ……?」

「俺が君に贈りたいんだ。だめか?」

 そんな言い方をされたら、私が料理を作る時と同じように、喜ぶ姿を見たくてやっているんじゃないかと期待してしまう。

「私……契約結婚の相手だよ。本当の妻じゃないのに、そこまでしてもらうなんて」

「そんなこと、気にしなくていい」

 志信さんならそう言うだろうと思っていた。

「……私は気にします」

 ぽつりと言ったひと言は、意図せず敬語だった。

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