気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「もし迎えが必要なら連絡してくれれば、すぐに行くよ」

「ありがとう」

 来週の話なのにそう言ってくれるのがうれしい。

「それじゃあ、おやすみなさい」

 立ち上がった志信さんが私の前にやって来て、じっと見つめてくる。

 私たちの間は密着しているようで、紙一枚分の絶妙な距離があった。

「どうしたの?」

「……夫婦らしいことをしてもいいか?」

「えっ? 別にいいけど……?」

 いったいなにをするのかと思ったら、心の準備ができる前にぎゅっと抱き締められた。

「おやすみ、優陽」

 全身を包み込む心地よいぬくもりと、耳もとで響く志信さんの声は、私の思考を容易に奪う。

 一瞬だけ私を抱き締めた志信さんは、なにごともなかったように背を向けて自室へと消えていった。

「おやす……み?」

 なにが起きたのか理解できず、立ち尽くしたままつぶやく。

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