気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 今のはなんだったのだろう? 夫婦らしいことをする? どうして?

 遅れてぶわっと顔が熱くなり、その場にしゃがんだ。

 どんな気まぐれで、どんな理由があっての行為でも、もういい。

 もっと抱き締められたいと思った時点で、これ以上この気持ちを押さえきるのは不可能だった。



 金曜の夜がやってきた。

 久しぶりに顔を見られて安心したのは私だけではなかったようで、円香もうれしそうにしている。

 雰囲気のいいおしゃれな居酒屋は、女子会向けだとホームページに書いてあった通り、女性客が多い。

 お喋りを楽しむ声がそこかしこから聞こえてくる中、私たちの席は店の奥にある個室だった。

 四人席らしく、荷物を椅子に置いてのびのびとテーブルを占領する。

「結婚したこと、どうして言ってくれなかったの? びっくりしちゃった」

「私だっていきなり言われてびっくりしたよ。相手はどんな人?」

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