気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「……うん」

 円香が手もとのグラスを指でつついて呟く。

「なにを考えてるのか、ずっとわからない。……私のことなんて好きじゃないはずなのに」

「どういうこと……? 好きじゃないのに結婚したの……?」

「……なんで私だったんだろうね。……いや、理由は聞いたんだけど」

 一気にテンションが下がった円香を見て不安になる。

 いつも明るい彼女がこんなふうになるなんて、よほどよろしくない結婚生活のようだ。

「……悩んでるの? 結婚したこと」

「もうずっと悩みっぱなし。……ああもう、愚痴っぽくなりたくなかったのに」

「いいよ、吐き出しちゃえ」

 こんなに悩んでいると知っていたら、もっと早く私のほうから連絡すればよかった。

 私も志信さんとの生活で悩むことはあったけれど、円香ほど深刻ではない。

「……私たち、ずっとお互いの恋愛についてだけは話してこなかったよね」

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