気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「うん。……私のせいだよね? 高校の時のあれがあったから……」

「それもちょっとあるけど、私も話せるような恋愛をしていなかったから」

「そうなの……?」

「大学の時に、いろいろあって」

 私と円香は違う大学に進んでいる。

 学園祭に遊びに行ったり、今日のように会ったりはしたけれど、具体的にどんな大学生活を送っていたかまでは知らない。

「それはそれで割り切ってたつもり。二度と恋愛なんかするかって思ったけどね」

 たった一度、円香が酔った勢いで『もう恋愛はしたくない』とこぼした時のことを思い出す。

 あの時の円香は寂しそうだった。そして、悲しそうだった。

「なのに結婚……なんでこうなったんだろ……」

「……お水飲む?」

 ここまで酒に弱い人ではなかったはずだけれど、溜め込むものが多いせいで回りが早いのかもしれない。

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