気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「……優陽は、好きになっちゃいけない人を好きになったこと、ある？」

「えっ」

　円香の言葉が胸の内の深い場所に突き刺さる。

　今、私が一番悩んでいるのがそれだ。心を読まれたのかと思ってしまった。

「どうして急にそんなこと……」

「聞きたくなっただけ。……で、どう？」

「……あるよ」

　今まさにその状況だとまでは言わない。

　でも認めたことで、この気持ちが本当に恋だと理解してしまった。

「好きにならないようにするって難しいんだなって思った。もうね、一回素敵だなって思ったらだめなの。ちょっと目が合っただけでどきどきしちゃう」

　志信さんは家にいる時、家事をする私と目が合うとふにゃっとやわらかい笑みを見せてくれる。

　あの顔を見るといつもどきどきして、胸が締め付けられるような切ない気持ちになった。

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