気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「……好き合う関係じゃないってわかってるんだから、優しくしないでくれたらいいのに」

「その人、優しかったの?」

「うん。……すごくいい人」

 円香は過去の人だと思って質問しているけれど、志信さんは今の人だ。

 目的がわからない親切と、まるで甘やかすようなプレゼント。無意識に自分の胸もとに手を寄せ、贈られたネックレスにそっと触れる。

「……わかるなあ」

 円香が大きく息を吐いて、グラスに入った水を飲む。

「わかりすぎて泣きそう」

「泣いてもいいよ。ぎゅってしてあげる」

「やだ。子どもみたい」

 そっぽを向いた円香に手を伸ばし、その手を握った。

「私が泣きたい時は、円香が一緒にいてくれたでしょ。だから私も一緒にいる」

「優陽と結婚すればよかったあ」

「……大変だよね、結婚って」

 今なら優陽の悩みに共感できる。

 彼女の抱く悩み事とは種類が違うだろうけれど。

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