気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「なんにも心配しないで、素直に夫と幸せになれたらそれが一番なのにね……」

 酔った円香に手をにぎにぎといじられて苦笑する。

 私も志信さんと幸せになりたい。

 愛してると言って、受け入れてもらいたい。

 だけどそれは、叶わない夢だ。





 終電には間に合ったものの、日付けを過ぎてからの帰宅となった。

 それなのに玄関のドアを開けると、志信さんが安堵の表情とともに出迎えてくれる。

「遅いから連絡しようかと思った。楽しかったか?」

「……うん」

 楽しかったと言ったつもりが、くすぶっている気持ちに嘘をつけず曖昧な回答になった。

「楽しかったよ」

 変に思われても心配をかけるだけだろうと思い、一度は呑み込んだ嘘を吐き出す。

 靴を脱いで私室に荷物を置き、洗面所で手を洗ってからとぼとぼとリビングに向かった。

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