気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 ソファに座ると、志信さんがためらいがちに隣へとやって来る。

「……優陽」

 踏み込むべきか、やめておくべきか――。

 彼らしくないもどかしげな表情から、薄っぺらい言葉程度ではごまかせなかったのだと悟る。

「友だちが悩んでるみたいなの」

 話す気はなかったのに、気が緩んでこぼれ出た。

 志信さんが姿勢を正して、そっと私の肩に手を乗せる。

「俺は力になれるか?」

 優しく尋ねられてから、この人は私が思うよりずっと『私』を理解しているのかもしれないと思った。

「友だちの悩みを解決したいと思っているんだろう? 俺は君の力になれるかな」

 言葉が足りなかったと思ったのか、改めてもう一度質問される。

「わからない。私も力になりたいけど……。どうすればいいんだろう」

「……おいで」

 志信さんが軽く手を広げて言う。

< 168 / 276 >

この作品をシェア

pagetop