気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 円香のからかいに応えて、その手をぎゅっと握ってみる。

 てっきり温かいと思ったのに、その指先は冷たくなっていた。

「あれ、寒い? 手、冷たくなってるよ」

「……緊張しすぎたせいかも。さっきから下手なことしないようにってどきどきしっぱなしだから」

 来た時は私のほうが緊張していたのに、どうやら円香に移ってしまったようだ。

 今度は私が緊張を解く番かもしれないと思ったその時――。

「円香」

 唐突に割り込んできた第三者の声に振り返る。

 そして、ぎょっとした。

「筑波社長……?」

 彼は相変わらず無表情のままだったけれど、真っ黒な瞳には焦りや戸惑いが窺えた。

 なぜ先ほど、檀上で話していた人がこんなところにいるのか。

 いや、それよりもなぜ、私の親友の名前を呼んだのか。

「どうしてお前がここにいるんだ」

「それはこっちの台詞だよ。どうしてあなたが……」

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