気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 この様子だと久し振りに会うようだし、相手が相手なだけに滅多に会えるような人でもないだろう。

 だったらいつでも会える私は譲ったほうがよさそうだ。

「私のことはいいから、ゆっくり話してきて」

「ありがとう。ひとりにしてごめんね」

 ぎゅっと円香に抱き締められる。

 彼女を挟んだ向こう側で、筑波社長が唇を引き結んでいた。

「こちらの都合でひとりにするのも申し訳ないな。今、案内役を呼んでくる」

「えっ、そんな。お気遣いなく」

 慌てて言うも、もう彼は背を向けて行ってしまった。

「……ほんと、人の話を聞かないんだから」

 円香がぽつりと言ったのが聞こえて、単なる知り合いよりは深い仲にあったんじゃないかと邪推する。

 そう感じさせるだけの気安さが、今のひと言から滲んでいた。

 でもそれにしては、名前を聞いても知り合い本人だとわからなかったのが引っかかる。

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