気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「逃げないから掴まないでってば」

 円香が筑波社長に連れられてその場を離れる。

 残された私は、改めて水無月社長と向かい合った。

「本当に大丈夫なんですか? 私でしたらひとりでも……」

「案内ついでに、君の感想や意見を聞かせてもらおうかな。それなら変に気を遣わずに済むだろう?」

 彼の中では既に案内をすることが確定事項らしい。

 断り続けるの申し訳ないし、ここは素直に受け入れたほうがよさそうだ。

 どちらにせよ、円香が戻ってくるまでは時間があるのだし。

「わかりました。あまり気の利いた意見は言えないかもしれませんが、それでもよろしければ」

「お客様のひとりとして、率直な言葉が聞ければ充分だ。……と、改めて名乗っておこうか。俺は水無月志信という。短い間だが、よろしく頼む」

 流れるような仕草で名刺を差し出され、わたわたと受け取る。

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