気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 初めてあの香りを感じたのは、プレザントリゾートのオープニングセレモニーがあった日だ。

 そう気づいて、胸がきゅんとした。

 そんな大事な日と同じくらい、私とのデートの日を特別な日だと思ってくれたのだと知ったから。

 うれしくなって志信さんの胸に顔を埋めると、髪を撫でられた。

 私は志信さんが好きだ。愛している。

もうこの想いを押さえておくなんてできそうにない。

 ――だから、怖くなった。

 好きな人と結ばれてうれしいけれど、志信さんが私をどう思っているのか、決定的な言葉はもらっていない。

「優陽」

「ん?」

「かわいい」

 私を喜ばせる言葉には違いなくても、欲しいものはそれじゃない。

 志信さんの気持ちが知りたくて、だけど聞く勇気を出せなくて、もどかしかった。
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