気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「ああ、ゆうちゃん。おかげさまで元気だよ。でも嫌ねえ、この年になるとどこもかしこも不調ばっかりで」

 祖母は車椅子に乗って現れた。

 最後に見たのは去年の正月。あの時より顔のしわが深くなっている。

 今年でたしか八十五歳になるはずだから、年齢が顔に出るのも仕方がない。

「へえ、どうしたんだよ。それ」

 そんな声が聞こえると、いきなり腕を引っ張られた。

 乱暴な扱いに顔をしかめたのも束の間、無遠慮に顔を覗き込まれる。

「前からそんな高そうなものつけてたっけ?」

「さ……触らないで」

 せめて今日を耐える勇気が出るようにと、耳に志信さんからもらったイヤリングをつけていた。

 伸びてきた手を思わず拒んでしまい、はっとする。

「ごめん」

「悪い悪い、驚かせたよな。俺とお前の仲なんだから、そんなびっくりするなよ」

 肩を叩かれて引きつった笑みを返した。

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