気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「渋滞、平気だった?」

「優陽ちゃん!」

 満面の笑みを浮かべた母にぎゅっとされて、ちょっと息が苦しい。

「もー、散々だったの。途中でおトイレに行きたくなっちゃって、サービスエリアに寄ったら、出口のところで事故が起きたり――」

「お喋りもいいけど、とりあえず中に入ったら。優陽ちゃんだって立ちっぱなしにしたらかわいそうだろう?」

 苦笑した父が母の長話を止めて、和室へ向かうよう促す。

 ひとり暮らしを始める前はよくこんなことがあったのを思い出し、懐かしい気持ちになった。

「そういえば優陽ちゃん、結婚生活はどう……?」

 話題を切り替えた母が心配そうにこそこそ話しかけてくる。

 事情のある結婚だと伝えたから声をひそめているのだろう。

「それなら――」

 説明しようとした時、廊下の向こうから宗吾くんがやって来るのが見えた。

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