気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼にはあまり聞かれたくないと思ったタイミングで、玄関のベルが鳴る。

「誰か出てくれるー?」

 祖母が遠くから言うのが聞こえたから、代わりに玄関のドアを開けた。

 そして、絶句する。

「どうして志信さんがここに?」

 大きな紙袋を持った志信さんは、私を見て安心しているようだった。

「忘れ物を届けに来たんだ。連絡したんだが、気づかなかったか?」

「あ……」

 それは私が今日の集まりのために用意しておいたお菓子だった。

 志信さんに教えてもらった、ちょっといいものである。

 宗吾くんの対応をどうするか考えすぎて、すっかり頭から抜け落ちていたらしい。

「わざわざありがとう」

「君が行く前に気づけばよかった。すまないな」

「ううん、私がうっかりしていたのが悪いから」

「久しぶりにご家族に会うんだから、楽しみにしすぎてうっかりするのも仕方がない」

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