気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 お菓子を受け取ると、当然のように髪を撫でられる。

 彼に触れられるのは少しも嫌じゃないことを再確認していると、ふと視線を感じた。

「優陽ちゃん、もしかしてその人が……」

 しまった。両親がいるのを完全に忘れていた。

「そ、そうなの。この人が私の……夫、だよ」

 どうやら志信さんも私しか見ていなかったようで、すっと手を引いたのがわかった。

 だけど彼は失態をそのままにするような人ではない。

「初めまして、お義母さん、お義父さん。水無月志信と申します。ご挨拶が遅れてしまいましたが、お会いできて光栄です」

 志信さんのまとう空気が、プレザントリゾートで出会った時と同じものに変わる。

 それに気づいてから、いつも私といる時は素で接してくれていたのだと悟った。

 今の彼は、気配りができる話上手の社長さんだ。

「えっ、水無月さんって……この間できたあの大きいリゾートの?」

< 229 / 276 >

この作品をシェア

pagetop