気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「妻が言うようにずっと心配していました。でも、大丈夫そうですね」

 志信さんの物問いたげな視線を受けて、そういえば肝心なことは伝えていなかったかもしれないと反省する。

「ふたりには話してあるの。……私たちのこと」

「結婚した話は伝えたと聞いたけど、まさかそこまで――」

「お前、結婚してたのか?」

 そこに宗吾くんの声が響いて、そういえば彼もいたのだったと苦い息を吐いた。

「そういや、指輪……」

 耳飾りにはすぐ気づいたくせに、私の左手の薬指で光る指輪は見ていなかったようだ。

「以前、会ったな」

 両親には敬語を使っていた志信さんが、少しだけ声を低くして言う。

「そういえば親戚だったか。忘れていた」

「結婚って……どういうことだよ」

「そのままの意味だ。君にはいつも妻が世話になっていたらしいな」

 そう言って志信さんが私の腰に手を回した。

「し、志信さん」

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