気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない

　抱き寄せられて縮まった距離は、少し心臓に悪い。

　これまで外では夫婦のふりを演じないまま過ごしてきたけれど、もしその機会があったら。こんなふうに接している姿を世間に見せつけていたんじゃないかと思った。

　ぐっと言葉に詰まった宗吾くんが、敵意に満ちた視線を志信さんに送る。

　それをものともせず、志信さんは私に微笑みかけた。

「せっかくのご家族の集まりを邪魔するのは申し訳ないな。もう行くよ」

「あ……うん。おみやげ、届けに来てくれて本当にありがとう」

「気にしないでくれ。帰りは迎えに来たほうがいいか？　それなら適当に時間を潰して待っているが」

「申し訳ないからいいよ」

「遠慮しなくていい」

　顔を寄せた志信さんが私の頬に唇を押し当てる。

　まるで見せつけるようなキスは、私も含めたその場の全員を硬直させた。

「連絡、待っているからな」