気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 そう言うと、志信さんは余裕たっぷりの笑みを浮かべて玄関を出て行った。

「どちら様だったの?」

 車椅子に乗った祖母が不思議そうな顔でやってきて言う。

 まだ人前でキスされた余韻が抜けない私の代わりに、母がふふっと笑った。

「優陽ちゃんの王子様が来たの。すごくかっこよかった」

「王子様? あらまあ、ゆうちゃんにもそんな人がいたの?」

「う、うん、一応」

 恥ずかしくなりながら応えると、父が隣でむすっとした顔になった。

「人前であんなことができるなんてずるいじゃないか。お父さんがやったら、絶対お母さんに逃げられるぞ」

「なーに、お父さん。水無月さんがかっこよすぎて拗ねちゃったの?」

 なぜか上機嫌な母が、ようやく靴を脱いで玄関に上がる。

 父もそれに続き、私もみんなが集まる和室に向かおうとした。

「おい」

 その前に、肩を強く掴まれて呼び止められる。

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