気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「……痛いよ、宗吾くん」

「お前、どうして結婚なんかしてるんだ? 俺が引き取ってやるって言っただろ」

 少なくとも一年以上前の話だ。彼は去年、海外に行っていたのだから。

「ただの冗談だと思ってたよ」

 そう言って、不満げに肩を掴む手を外す。

「は?」

「でもこれで宗吾くんにも心配かけないで済むよね。ずっと『お前と結婚したがる男なんかいない』『このままだといき遅れになる』って言ってたもんね」

 彼に言われた言葉をそのまま口にし、まっすぐ見据える。

「おかげさまで、無事にもらってくれる人と出会えたよ」

「おい、優陽……っ」

 まだ宗吾くんは言いたいことがあるようだけれど、私にはもうない。

「みんなが待ってるから行かなきゃ。おみやげも配らないとだし」

 背を向けて、今度こそみんなのいる和室へ向かう。

 ずっと塞いでいた気持ちは、志信さんのおかげですっかり晴れていた。

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