気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 夫がいると言うくらいではきっと引かなかった宗吾くんに対して、志信さんの登場は大きな意味があっただろう。

 ありがとう、志信さん。

 さっきキスをされた頬に触れると、自然と口もとが緩んだ。



◇ ◇ ◇



 優陽との関係が変わってからというもの、俺の人生は鮮やかに色づいた。

 思いがけず顔を合わせることになった彼女の両親とは、今度改めて時間をつくって会うつもりでいる。

 そのためには、着手予定の案件を早く片付けて時間を用意しなければ――と思っていたある日のことだった。

「また、だそうです」

 魅上がデスクに広げた手紙は、ドラマで犯罪者が予告する時のそれに似ていた。

 切り抜いた新聞の文字を貼り合わせて文章を作るあれだ。

「なんともまあ……お粗末だな。今どき、こんな手紙で嫌がらせをする人間がいるなんて思わなかった」

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