気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「こんな卑怯な真似をする人間の思い通りになれと? だいたい、何度彼女を振り回せば気が済むんだ。今度は都合が悪くなったから離婚しろ? 人の人生をなんだと思っている……!」

「私の仕事は会社のため、そして社長のために最善を尽くすことです」

 声を荒らげた俺に一歩もひるまず、魅上はきっぱりと言い切った。

「奥様の存在が社長の邪魔になるのなら、切り捨てる提案もします。離婚すれば解決するなら、それが一番楽な方法ではありませんか? 愛し合ってした結婚だったら私もこうは言いません。ですが、社長がしたのは契約結婚です」

 優陽本人の口からも聞いた『契約結婚』の単語に、すっと頭が冷える。

 魅上にあたるのは間違っている。相手が優陽でなければ、俺も離婚したほうが合理的だと判断したかもしれない。

「……一年続けると言ったんだ」

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