気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「それはなにもなかった場合の話でしょう。ですが、問題が生まれたんです。結婚していることによる問題が」

「しかし」

「なぜ、そんなに拒むんですか? 契約結婚だと一番よくご存じなのは社長でしょう?」

 自分だって無茶を言っているのはわかっているが、魅上の提案をのめば優陽を失うことになる。

 説得するだけの理由を探そうと、一瞬口を閉ざしたのが悪かった。

 はっとなにかに気づいた魅上の目が、みるみるうちに見開かれる。

「まさか――」

「考える時間をくれ」

 もしも今、彼女を好きになってしまったのかと聞かれたら嘘をつけそうにない。

 その場しのぎのための嘘だとしても、彼女への想いを自分の口で否定したくなかった。

「君の考えはわかった。いつも会社のためにありがとう。本当に感謝している。だが、その提案だけは飲めない。……後の対応は俺に任せてくれ」

「……承知しました」

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