気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 魅上は深く頭を下げると、部屋を出ようと背を向ける。

 そしてドアの前で立ち止まり、俺を振り返った。

「どうか、社長にとって最も正しいご判断を。失礼いたします」

 部屋を出て行った魅上の足音が遠ざかっていく。

 俺の中に優陽と離婚する選択はなかった。

 個人的な感情によって、会社に多大な影響を与えかねないとしてもだ。

 彼女との結婚を選ばないために、どんな手を使ってでも問題を解決させなくてはならない。

 椅子に腰を下ろし、額に手を当てて天を仰いだ。

 犯人の目的は果たして俺なのか優陽なのか。

 俺が離婚しても、犯人が受けるメリットはないように思う。

 それとも今はうまく頭が回らないせいで思いつかないだけなのだろうか。

 もし、このまま離婚を拒み続けたら優陽はどうなるのかが気になった。

 少なくとも犯人は俺の妻が優陽であることを知っていて、隠し撮りを可能としている。
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