気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 緊張したその顔を見て、決定的な言葉を彼に言われるくらいならと口を開いた。

「離婚、するの?」

 言葉が喉の奥でつかえて、不自然に途切れる。

 志信さんは唇を固く引き結び、微かに眉根を寄せた。

「犯人の考えはわからないけど、私を理由にして、志信さんを思い通りにしようとしているんだよね。離婚の脅迫で済んでいる今のうちに……別れたほうがダメージが少ないと思う。志信さんも、会社も、そのほかのことも」

 なにが彼にとって一番いいのか考えたら、答えはひとつしか思いつかない。

「迷惑はかけたくないよ。……契約を早めに終わらせよう」

「君は、それでいいのか」

「いいよ」

 即答した自分に驚いた。

 離婚したくない、もっと一緒にいたいという気持ちをお腹の奥に押し込める。

「あなたを困らせないための結婚だった。だから、いいの」

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