気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
「愛している。君が、俺に人を好きになる気持ちを教えてくれたんだ」

 不思議と、『信じられない』『嘘に決まっている』と思う気持ちはなかった。

 ただ、よかったと思った。

 彼が私にキスをし、触れたがる気持ちは、ただの欲望じゃないとわかったから。

 その気持ちを知れただけで充分だと思えるほど、安心した。

「人を好きになるのはこんなに苦しいんだな。君を好きだと知ってから、別れる日のことを考えてずっとつらかった。俺が言い出したことだから、この気持ちの伝え方に悩んでしまった。でも今、言わなければきっと君を失う。それだけはどうしても嫌なんだ」

「私がいたらどんな迷惑がかかるかわからないのに」

「君は? 俺をどう思っているのか、教えてくれ」

 いつも私の話を聞いてくれた人が、さっきから言葉を遮ってくる。

 心の準備をできずにいる私を、彼の眼差しが急かした。

「……好きだよ」

< 248 / 276 >

この作品をシェア

pagetop