気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
 彼は私と志信さんの仲をどの程度のものだと思っていたるのだろう。

 やけに速い返信は、彼の焦りを表しているような気がしてならない。

【そっちがそのつもりならもういいです】

【本当にいいのか? 俺と話したいことがあるのかと思ったのに】

【なにが言いたいの?】

【会って話してやるって言ってるんだよ。だからひとりで来い。誰にも言うなよ】

 反射的に否定を伝えようとした手を止める。

 代わりになにを送ろうか悩んでいると、次のメッセージが送られてきた。

【俺の言う通りにすれば、誰もお前のせいで不幸にならない】

「優陽?」

 志信さんが心配した様子で私の名前を呼んだ。

「大丈夫か? 顔色が悪いぞ」

 目の前にいる志信さんと、かつて私に優しい言葉をかけてくれた志信さんの姿が重なる。

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