気高き不動産王は傷心シンデレラへの溺愛を絶やさない
『無理をする前に言ってほしいし、俺がいることを頭に置いておいてほしい。支えたいんだよ。頼ってほしい、って言ったら伝わるか?』

 私が我慢すれば、大切な人を不幸にさせずに済む。

 その意味を噛み締めた瞬間、心が決まった。

「私、志信さんのためならなんでもできるよ」

「どうした、急に」

 手早く宗吾くんに返信し、スマホを脇に追いやって志信さんを抱きしめる。

「優陽、なに――」

 戸惑う志信さんにかまわずキスを贈った。

 この人を守るために、覚悟を決めよう。

 自分がどうなったとしても、彼と、彼の大切なものは守ってみせる。

 もしも逆の立場だったら、きっと志信さんも同じことをするだろうから。



 例の連絡から数日が経ち、金曜の夜を迎えた。

 宗吾くんが指定した時間は遅く、待ち合わせ場所の公園には人の姿が見当たらない。

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